過払い金|借金返済の片に建物の競売を・・・・

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事情

主文

一原告の請求を棄却する。
二訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び争点

第一 申立

一被告は原告に対し,金1294万円及びこれに対する平成13年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二仮執行の宣言

第二事案の概要

本件は,原告が被告に対し,民法568条1項の規定に基づき代金減額請求をした事案である。
一争いのない事実
1原告は,平成11年4月23日,競売による売却により,神戸市A区B通1丁目1番3所在の宅地63.33m2(以下,「本件土地」という。)及び同所所在の家屋番号1番3の木造スレート葺2階建作業所・事務所(以下,「本件建物」という。)の所有権を取得した。
2(1)本件土地は甲が所有していたところ,1平成元年10月17日設定,同日登記の債務者を被告とし,株式会社ワイドサービスを根抵当権者とする根抵当権設定登記,2平成元年12月1日設定,同日登記の債務者を有限会社クラブジャップス(以下,「訴外会社」という。)とし,株式会社兵庫銀行を根抵当権者とする根抵当権設定登記,3平成3年6月21日設定,同日登記の債務者を訴外会社とし,同銀行を根抵当権者とする根抵当権設定登記がなされていた。
(2)本件建物は,平成3年8月5日頃に本件土地上に建築され,同年9月3日,被告名義で所有権保存登記がなされ,同年8月5日設定で上記(1)1ないし3の各根抵当権の共同担保に追加するとの設定登記がなされた。
(3)甲は平成7年1月11日に死亡し,被告が単独相続して,平成8年1月22日付けで本件土地につき被告に所有権移転登記がされた。
(4)平成8年3月29日,(1),(2)記載の本件土地,建物に対する根抵当権設定登記は全て抹消され,新たに本件土地,建物に,同日設定の債務者を訴外会社とし,株式会社みどり銀行を根抵当権者とする根抵当権設定登記がなされた。
(5)株式会社みどり銀行は(4)の根抵当権に基づき,本件土地,建物の競売開始の申立をし,神戸地方裁判所は,平成10年7月1日,競売開始決定をした。
3(1)本件土地,建物の競売事件の現況調査の際,被告の弟乙は,本件建物につき,被告との間で平成8年3月12日から期間15年間の賃貸借契約を締結し,賃料は月額7万円で,敷金は300万円であるとの主張をした。
(2)同競売事件では,乙主張の賃貸借契約に基づく賃借権は,賃借権としては評価されず,最低競売価格も本件建物に賃借権が存在していることを認めずに決定された。
4(1)原告は,平成11年4月27日,神戸地方裁判所から本件建物につき不動産引渡命令を得たが,乙の抗告により,大阪高等裁判所において同命令は取り消された。
(2)原告は乙を被告として,神戸地方裁判所に本件建物明渡しを求める訴訟(平成11年(ワ)第1278号)を提起したが,同裁判所は平成13年1月24日原告の請求を棄却し,大阪高等裁判所も同年7月25日原告の控訴(同裁判所平成13年(ネ)第784号)を棄却し,同判決は確定した。
二原告の主張
1本件土地,建物の競売事件においては,本件建物についての被告と乙間の賃貸借契約に基づく賃借権は買受人である原告に対抗できないものであるとして売却手続が進められたものである。
ところが,同賃貸借契約は存在し,かつ,原告に対抗できることが前記一4(2)の判決により確定した。
2よって,原告は,民法568条1項の規定に基づき,瑕疵担保責任を追及できるところ,同項では代金の減額請求は認められているが,損害賠償の請求は認められていない。
一方,同法566条1項では,損害賠償の請求をすることは認められているが,代金の減額請求は認められていない。
この趣旨は,同法566条1項の場合,割合に応じて代金を減額することは困難であるため,同法563条や565条とは異なり損害賠償を請求できるとしたものであるといわれている。
しかし,権利の瑕疵(欠缺)はその程度に応じて評価することは可能であり,同法566条1項に規定する損害賠償の中には,目的物の価値の不足分(結局は代金減額請求に相当する)を含むと解すべきである。
568条1項の「代金の減額」と566条1項の「損害賠償」とは実質的に目的物の価値の不足分を請求するということでは同じであると考えられる。
すなわち,「代金の減額」も「損害賠償」も,契約の一部解除とそれに伴う原状回復義務を規定しているのである。
なお,民法568条3項は過失のある者に対して損害賠償の請求ができると定めているが,この損害賠償とは,過失ある者に対しては代金の減額で原状回復しても補填できない損害を請求できることを定めたものであり,566条1項の損害賠償請求(実質的には代金の減額請求)をすることを禁じているものでない。
3原告は,少なくとも,平成11年5月1日から平成23年2月分までの本件建物賃料すら取得できず,142か月分の賃料相当の994万円及び敷金返還分300万円の合計1294万円の損害を受けているので,同金額の代金減額請求をする。
三被告の主張
1被告は無資力である。
したがって,民法568条2項が予定している二次責任者の「代金の配当を受けたる債権者」である株式会社みなと銀行に請求すべきである。
2本訴は,前記一4(1)の抗告事件の決定がなされ,原告が本件建物に原告に対抗できる賃借権があることを知った平成11年6月8日から1年を経過した後に提起された。

理由

一本訴は,民法568条1項,566条の規定に基づく代金減額請求であると解される。
ところで,民法568条1項は,「強制競売の場合においては買受人は前7条の規定により債務者に対して契約の解除をなし又は代金の減額を請求することを得」と規定し,損害賠償請求を認めていない。
一方,566条1項は契約の目的を達成できないときは契約の解除をできるとし,その他の場合は「損害賠償の請求のみをなすことを得」と規定し,代金減額請求を認めていない。
これは,568条の場合,競売手続は債務者の意思に基づかないで行われ,申立債権者,その他の債権者も目的物の権利関係等についてこれを知る機会に乏しい場合が多いので,債務者や債権者に損害賠償義務を課すことは酷に過ぎるという趣旨であると解される。
そして,瑕疵担保責任としての損害賠償義務を負わせないかわりに,同条3項で,過失ある者に対しては損害賠償義務を負わせることとしたものであると考えられる。
566条の目的物の完全な使用収益を妨げる他人の権利の付着の場合,その瑕疵は質的なものであり,量的なものでないために,割合的算定が困難なので代金減額請求を認めなかったものと解される。
以上によれば,566条の規定による568条1項に基づく買受人の権利は,契約解除に限られ,代金減額請求はできないものと解するのが相当である。
原告は,代金減額と損害賠償は質的に同じであり,権利の瑕疵による不足分の算定も可能であると主張するが,568条1項が損害賠償請求を認めていないことは明らかであり,566条に代金減額請求と同質の損害賠償請求の規定があるからといって,568条1項に基づき代金減額請求できるという解釈はとり得ない。
代金減額請求は契約の一部解除の性質を有することは原告主張のとおりであるが,本件のように,目的物に使用収益を妨げる他人の権利が付着している場合,どの一部を解除するというのか不明である。
二民法568条1,2項は,一次的に債務者の,二次的に配当を受けた債権者の責任を認めている。
「債務者」については,物上保証人の場合,債務者に対して求償権を取得するから,担保物に権利の瑕疵があるのに瑕疵がないものとして売却されたときには,物上保証人に瑕疵がないものとして売却されたことによる利益が帰することとなることを理由に,物上保証人が「債務者」に該当するとする見解がある。
しかし,条文上はあくまで「債務者」と規定されていること,求償権を取得するといっても,通常債務者は無資力である(民法568条2項参照)から,有名無実であり,買受人は配当を受けた債権者に568条2項の規定により請求することが可能であるのに,物上保証人は実質的には求償もできないというのは不合理であることを考えると,「債務者」とは文字どおり債務者を指すと解するべきである。
本件の担保権実行による競売の担保権の債務者は,前記争いのない事実2(4),(5)のとおり訴外会社であって被告ではない。
したがって,被告に対し,民法568条1項に基づき請求することはできない。
三結論
以上の次第で,原告の請求は理由がない。

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